日本の命綱は大丈夫か

宮崎正弘氏のメルマガを読んで、憂鬱になる。
大手新聞は一切報道しない内容で、その中身は深刻過ぎる。
原油の2割をイランから輸入している日本。
そのイランの港湾を建設している中国。南支那のほとんどを中国の領海に組み込んでしまった中国。

万が一に米中経済戦争が悪化し、米国が対中制裁を行う場合に日本にも協力を求める事が起こりうる。
そうなればイランからの輸入を日本は止められることが出来るのか。
東支那海の油田開発(ガス田?)を中国への配慮からか数十年も封印している日本。
その油田も中国に採掘により残量も随分減っているとされる。
仮に今から採掘に踏み切っても油田が稼働できる頃には既に空っぽとも言われている。
日本にもシェールガスがあるという研究も。今からでも進めるべきでは。
既に諸外国の顔色を見て自粛している段階ではない。

中国は静かに、しかし着実に中東の油田をおさえ、中東秩序を壊乱している
  ホルムズ海峡に60%の原油輸入ルートを依存する日本の脆弱性

 日本はイランとオマーンに挟まれたホルムズ海峡に60%の原油輸入ルートを依存する。紅海ルートを含めると80%、そのうえガスをカタールに大きく依存している。
この日本の資源ルートの脆弱性は過去半世紀にわたって有識者から指摘されているにもかかわらず、エネルギー依存源を多岐に分散していないのは日本政治の貧困からか、戦略的発想が不得手だからのなのか。

 対照的な対応をとるのが、いわずとしれた中国である。
 米国のイラン制裁の余波でイランから撤収をはじめたフランスのトタル社の鉱区利権は中国シノペックが横取りする。
中国はイラン、イラク、クエート、そしてサウジアラビア、UAEからも大量の石油を輸入している。

 中東の地図をじっくり眺めてみよう。
 ホルムズ海峡からぐるりと時計回りにオマーン、イエーメンを回って西南へ行くと「紅海ルート」の入り口。手前がソマリアの海賊が横行するアデン湾、そこからスエズ運河へ向かうタンカーや船舶はイエーメンとジブチに挟まれるマンドス海峡(「パブルマンデブ海峡」が正式名称)を航行し、サウジの西海岸の石油積み出し港ジェッダへ向かう。

サウジの石油は西海岸のカフジ油田が有名だが、長いパイプラインを西へも敷設して、ジェッダからも輸出している。そのさきがシャルムエルシェイク、そしてエジプトのスエズ運河だ。シャルムエルシェイクはいまではロシア人の保養地となっており、二年ほどまえにもロシアの飛行機が墜落し、世界から注目を集めた。

 この地図を地政学的に解釈すると次のようになる。
 資源を一つのルートに依存するのは安全保障上からも危険極まりなく、嘗て大英帝国が七つの海を支配して世界に覇権をとなえることができたのは、船舶が通過せざるを得ないチョークポイントを軍事的に抑えたからである。
いまも英国はジブラルタルを抑え、シンガポールに拠点を構築している。

日本はマラッカ、ロンボク海峡に原油タンカーの航行ルートを依拠しているが、その北が南シナ海で広大な海を中国が見張っている。

 ▲中国はなぜジブチに一万人の軍事基地をつくったのか

 さてマンドス海峡ルートだ。
 この狭窄な海峡の西が内戦中のイエーメン。しかもイエーメンの西南部はイランの支援を受けたシーア派の軍事拠点だ。この武装組織をサウジアラビアとUEAが空爆し、直近では地上軍も派遣したが、完全に制圧できていない。イランからの武器はアデン湾あたりから陸揚げされている様子だ。

 対岸のジブチは米軍海軍基地があり、その隣が中国の軍事基地である。中国軍が一万人規模で駐屯している。
 中国が開発した南スーダンの原油も、700キロのパイプラインを通って、ポート・オブ・スーダンに運ばれ、一日20万バーレルが紅海ルートを南下して中国に運ばれる。なんのために中国軍がジブチにいるのか、もはや説明の必要がないだろう。

 中国は中東諸国に「一帯一路」をセットにしたプロジェクトの妙味と経済発展を語り、イランもイラクもクエートも、そしてカタールもUAEも中国の投資を当てにする。ドバイの高級マンションは中国の温州集団が巨額を投機した。
 そのうえで中国は長距離ミサイルをサウジアラビアに供与して、サウド王家に深く食い入り、サウジアラビアからも大量の石油を輸入している。あまつさえ中国はサウジアラビアから「砂」も買っている。大量の砂はセメント材料であるため、土木事業が旺盛な中国には必要だからだ。

 こうした状況下にあって、トランプのアメリカは中東に興味を失いつつある。
 なぜなら国内のシェールガス開発が成功し、原油とガスは自給自足が出来るからだ。残る問題はイランの核武装阻止であり、トランプはオバマ前政権が主導した「核合意」からあっさりと離脱した。欧州との亀裂は、この措置にEU諸国が反撥してからだ。

 サウジアラビアは米国が最後まで守ってくれるとは考えなくなった。
 オバマ前大統領がリヤドを訪問したときは冷遇された。投資も先細りになり、皇太子の呼びかけた文明国への脱皮のための近代化プログラムにも米国は興味を示さない。
 米国とサウジの冷却をチャンスと捉えたのがロシアだった。サウジ王と皇太子は、頻繁にモスクワを訪問するようになった。

 ▲中東の基本構造はサウジとイランの対決だが。。。。。。

 中東の基本構図はサウジアラビアとイランの対決である。
 しかしトランプは、イランとの核合意離脱、エルサレムへの大使館移転をやり遂げたが、サウジのためというより、イスラエル対策であり、全米600万のユダヤ票田の掘り起こしと、ユダヤ人実業家からの献金が副次的狙いとみてよいだろう。

 サウジはイランの西側の背後にあるアフガニスタン、パキスタンに支援お手をさしのべているが、とくにパキスタンには巨額を寄付した世界最大のモスクを寄付したほか、核兵器開発の胴元となった。もしイランが核武装すれば、サウジはパキスタンから相応分の核兵器を移転させるか、あるいはパキスタンから代理行為をさせるだろう。

 トランプはアリバイ証明的にシリアにミサイルを59発お見舞いしたが、事前にロシアに通知していたので、標的とされた場所には誰もいなかった。

 この打算的外交を知っているネタニヤフイスラエル首相も、モスクワに近付いてバランスを取り、さらには中国と軍事技術の提携に走って相当密接な関係を築いている。イスラエルはヨルダン、レバノンに展開しているヒズボラ、ハマスなどイラン代理兵の軍事拠点をミサイル攻撃しているが、これは間接的にはサウジの安全保障にも寄与するからサウジは米大使館のエルサレム移転に反対しなかった。
不思議なことにエジプトも黙っていた。つまりアラブ諸国はパレスチナ支援などと口では唱えているが、もはや政治生命をかけて支援するほどの問題ではないのである。

 イランは周囲を囲まれ、孤立したかに見える。
 ところが背後から支援の手をさしのべ、武器を供与し、石油を堂々と輸入しているのが中国であり、イランにも、サウジにもシリア同様に手を伸ばしているのがロシアという輻湊した構造になる。

宮崎正弘の国際ニュース・早読み」平成30年(2018年)6月23日(土曜日)弐 通巻第6734号

 中東の秩序を搦め手で攪乱する中国
   兵器を武器に密輸にも手を染め、はてしなく拡がる闇
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 中国はアメリカ製ドローン「プレデター」の模造品を大量に生産している。
 これが発覚したのはヨルダンで開催された武器展示会だった。ドローンのメーカーは「中国航天空気動力技術」や「軽准科学技術」で、しかも大型のドローンは無人の攻撃機(「彩虹」号とよばれ、西側のコードはCH―4,CH―5など)である。

 商業用の軽ドローンは世界一の生産量であり、すでに日本でも愛好家が中国製を購入している。中国製はアメリカ製のドローンの四分の一という廉価。これを大量に紛争地域に輸出しているから手に負えない。中東情勢を掻き乱していることになる。

中国製のドローンを導入したことで、シリアの戦局がかわり、またヨルダン、アルジェリア、イラク、サウジ、エチオピアも購入したとみられる。『NEWSWEEK』(日本語版、2018年6月5日剛)に拠れば、ナイジェリア、ザンビア、トルクメニスタン、パキスタン、ミャンマーにも輸出されたと推定されている。

 実際、シリア政府軍は、中国製ドローンと用いてISの拠点を攻撃し、その命中度は100%だったという。ただしプレデターとはことなり宇宙衛星とはリンクしておらず、有視界である。

 しかしアメリカはなぜ、この中国の武器市場壊乱を拱手傍観したのか。
 第一に高度軍事技術を外国に売却するには議会承認が必要であること。武器輸出は厳格な規制があり、台湾への武器供与でいつも議会が揉めるように、対日武器輸出にしてもF35で様々な議論があった。したがって米国製ドローンを輸入したのは英・仏とイタリアだけである。

第二にMTCR(ミサイル関連技術規制措置=国際協定)の遵守である。ところが中国はこのMTCRに加盟していない。やりたい放題になり、軍事輸出で金を稼ぐ、てっとり早い道である。

 中国にはモラルが存在しない。
 中国軍の一部の部隊や傍系の武器商社は迂回ルートの密輸にも手を染めている気配がある。
 イラン・イラク戦争のときは双方に夥しいスカッド・ミサイルを売っていた。シリア政府にドローンなどを供与する一方で、中国はあろうことか、ISにも機関銃、弾薬、そして指令系統を維持できる特殊携帯電話も売っていた。

米国の『スターズ&ストライプ』紙(2014年10月6日)に拠れば、ISは26ヶ国から多彩な武器を、砂漠に暗躍する武器商人から購入していたが、このうちのじつに26%が中国製であったことが分かっている。
ISの部隊間の連絡も中国製の特殊携帯電話(PT580H)が使われた。軍人の通信はデジタル数字など暗号化も可能で、戦場では20キロ範囲の距離で電波が飛ぶ、会話が敵に防諜されにくい設計であり、中国の「好易通科技有限公司」製。ブランドはHYTERA」。

 なにしろ中国軍の腐敗はシナ人のDNA、歴史的体質である。
蒋介石軍の幹部が毛沢東の八路軍に米国から供与された武器を横流していたように最近の中国の国産空母の設計図などを高官が米国に売り渡していた。この不祥事はロシアの「スプートニク」や、香港の「アジアタイムズ」(6月22日)が報じた。

報道に拠れば国有企業「中郷船舶重工業集団」の孫波社長が中央検査規律委員会に摘発され、「重大な規律違反」とされた。
中国国産空母は試験航海を適当におえるとただちに大連に運ばれ、改修工事に入ったのも、いたるところ不具合が見つかったからだ。また孫波社長は空母の設計図や機密をアメリカに売り渡していた疑惑が持たれているという。

東西冷戦時代、ソ連は九隻の空母を造った。ぜんぶが失敗だった。
最後の一隻はウクライナが所有していたが電気信号系統とカタパルト設備などを取り外して、鉄の塊をスクラップとして中国に売った。
それを十年掛けて回収したのが中国初の空母「遼寧」だった。孫波は、この秘密情報をアメリカに売ったようである。

宮崎正弘の国際ニュース・早読み」平成30年(2018年)6月24日(日曜日)弐 通巻第6735号